俺は人が荼毘にふされるのを初めて見たのは、母方の祖父の時だった。骨は残らず、そんなもんなんだろうとずっと思っていた。あとで聞いたが、死ぬ間際まで相当の薬を飲まされていたらしい。精神科医にかぎらず医者というのは所詮、死神の助手。死ななかったらそれは単なるまぐれだね。
祖父の死が少年時代のおいらにもらたした暗い影は、おそらく「死」だったろう。両親はおろか祖母ですら信仰がないので、来る日も来る日も「死」に怯え続けた少年時代だった。無論、神が救済などするはずもないが、逆に「死」と「孤独」は、以後ありきたりの風景と化し、現在に至る。
本当はもう誰も必要ではないはずなのだ。また、誰も必要としないはずなのだ。もしも、来年の桜を見ることができた暁には、名前を変えよう。
【命名】xtra zombie