死者の書

死者の書

死者の書

Mozilla

臓器ケース

ミイラマスク

先日、福岡市美術館の「古代エジプト展」にて「死者の書」を観てきた。

僕は正直、死んだ後もまた世界があるという、いわゆる「死後の世界」というものには興味がない。

これだけ不条理な世界に生まれて、死んだ後もまた世界があるなど「無限地獄」としか言いようが無いと考えるからだ。(最近は現世が愛おしいと思えるようになったが…。)

死んだらもう二度と目覚めない睡眠のように、安らかに眠らせていただきたいと思うのだ。

したがって、これほどまでに忌み嫌う「死後の世界」の旅の話をまとめた書物など興味など有ろうはずもなく、重点的に観るは、ヒエログリフの美、描かれた象徴(クリーチャー?)、そして、金目のお宝ということにして臨んだのだ。

なるほど文字は「マニュスクリプト」と呼ばれる手描きの文字(当然だが…w)。これは実に美しい。断言する。これは一見の価値がある。

死んでから再生するまでの長い道のり、試されたり、貢いだり、それはもう現実世界同様、気の滅入るプロセスなのだが、この美しい文字で記された「方法(マニュアル)」が難局を乗り越える術を示しているのだ。

それはさながら平家の落人亡霊から芳一を守るために和尚が書き連ねられたお経の如き威力を持っており、棺桶からミイラ包に至るまでびっしり書かれている「ありがたい」お言葉なのだ。

所狭しと現れる、ユニークなキャラクターの数々。キメラ生物のようなハイブリッドなものや、緑色の顔したオシリスなど馴染み深いもの。

今回、僕が個人的に最も興味深いと思えたのは「蛇」だ。

蛇は場面場面で刃物で切断されるのであるが、蛇を「情報(DNA螺旋)」と見る向きもあることを考えると、この「切る」行為は非常に興味深い。

また、画像を見つけることができなかったが、翼を持った「蛇」も描かれていた。

アステカ、マヤの神「ケツァルコアトル」と同じ造形なのだ。

エジプトの翼を持った蛇は「ヘロドトス」と呼ぶらしい。(ex. 翼のある蛇(ヘロドトス)

「蛇」もさることながら、「ピラミッド」という、よく似た建造物をとっても、エジプトはマヤ、アステカと共通の文化の上に成り立っているのでは?と思わせるのである。

また、twitterで話題の(おばけのQ太郎のような)彼や、NetscapeのMozillaくんにそっくりな、ちょっとおなかの出たワニのような(なんとなくトーベ・ヤンソンが描く「ムーミン谷」の住民のような)キャラクター(残念ながらネット上に写真を見つけることができなかった。)など、およそキリストよりも1000年近く古いビジュアルとは思えない現代的なデフォルメを見ることもできる。

ミイラを作る際に取り出される内臓を収める専用の入れ物などは、スターバックスでコーヒーを入れてもらえるかのようですらある。

ふと、思ったのだが…所蔵は「大英博物館」主催は「三菱」。

これらモダンなキャラクターを見ているうちに、なんとなく、だんだん、一杯食わされているような気がしてきた。

「大英博物館」は大英帝国が世界征服で得た略奪品の数々を収める専用アーカイブだ。

「三菱」は幕末のどさくさに英国商人グラバーと組んで巨万の富を得た一大財閥。

私だけだろうか…。うっすらと「ロッジ」とか「陰謀」の文字を感じるのは…。

余談だが、僕は「ミイラマスク」というものは純金製のマスクだとずっと思っていた。

当然だが、そんなはずもなく、あれは紙製のマスクに金箔を貼った、たいそう軽いマスクなのだ。